川にとっては大きなお世話
人の都合の「正常流量」


 山鳥坂ダム建設の目的の1つに「流水の正常な機能の維持」があげられており、「正常流量」というものが設定されています。以下、この「正常流量」について、『山鳥坂ダムについて(平成5年に建設省より発行されたパンフレット)』に書かれていることをご紹介します。



 川の機能、環境を維持する上で最低限必要な流量(維持流量)と既得水利流量を合計した流量が、「正常流量」と名付けられており、肱川では次のように決められています。山鳥坂ダム直下の河辺川で0.46、鹿野川ダム直下で3.19、大洲地点で夏期(3/16〜12/15)6、冬期(12/16〜3/15)5、中予分水の取水口下の祇園橋地点で4.4、です。そして、山鳥坂ダム建設によってこの流量が確保できるとされています。

 それではこの「正常流量」は、具体的にはどのようにして決められているのでしょうか。
 『山鳥坂ダムについて』には、正常流量設定の検討項目として次の項目が挙げられています。

1)漁業、2)動植物の保護、3)流水の清潔の保持、4)景観、5)地下水位の維持
6)塩害の防止、7)舟運、8)河口閉塞の防止、9)河川管理施設の保護、10)水利流量

 正常流量は、川の管理者(国土交通省)が検討をして決めるとし、肱川の場合、検討の結果問題なしとされています。5)6)8)については「最近10ヶ年の最小渇水流量」を確保すればよいとしています。

 建設省河川局監修の『建設省河川砂防技術基準(案)同解説』に、正常流量の設定として、「正常流量は、その河川の計画基準点について定めるものとし、原則として10ヶ年の第1位相当の渇水時において維持できるように計画するものとする。」と記されています。
 山鳥坂ダム工事事務所に、この渇水期において維持できるようにというのは「渇水流量」にするようにということですかと質問したらそうであるとの回答でした。




 「渇水流量」とは、「1年間のうちでこれ以上川の水が少なかったのは10日間だけ」という日の流量をさします。肱川大洲地点での「最近10ヶ年(山鳥坂ダム建設計画の基準にされた10ヶ年をさす)の最小流量」は3.26で、これは昭和60年11月9日の流量で、この日の鹿野川ダムの放流量は0です。また、山鳥坂ダム計画の基準になっている10ヶ年全ての年の渇水流量は、鹿野川ダム放流量0での量になっています。(※【肱川の流量】1 「既設のダムで操作された肱川の流量」参照
 肱川の正常流量「夏期6、冬期5」は、この3.26(「見直し案」「再構築計画案」では3.3に中予分水の利水量を加えて決められています。